
震災前以上に、立派な橋がかかる今の気仙沼線。
・・・本当にこのまま、誰も使わないバスを走らせ続けるのだろうか?
(気仙沼市広報,浜らいん45号より。撮影された日は平成29年2月11日)
<Ⅴ気仙沼線の鉄路、希望はある!!>
少し長くなりましたので、ここまでの流れを簡潔に述べてみましょう。即ち、何故、私が今でも気仙沼線の鉄路を信じる事が出来るのか。
それは『他所の路線に比べて、明らかに費用がかかっているから』
この事実に尽きる旨、皆様にお知らせしたい所存です。
確かに気仙沼線は残念ながら、柳津~気仙沼間は令和2年3月31日を以って、鉄道としては廃止が為されます。私も何も知らなければ、「もう永遠に気仙沼線で気仙沼に行けないのか」と失望感に苦しみ、復旧費負担を拒否した国を恨み続け、BRTしか頭にないJRをケチケチバカ企業めと罵り続けたでしょう。
ですが現実は、上の写真のような立派な橋が、今の気仙沼線には沢山造られている訳です。こんな目に見える形でお金がかかっている事が証明されると、どうしても私にはJRを批判する事が出来ませんでした。だからこそBRT専用道整備の疑問について、考察してみたくなったのです。そしてその答えが、『気仙沼線の将来的な鉄路復活』に結びつきました。
『廃止=永遠に鉄路は無理ではない』、この事実を皆様に強調させて頂ければと思っております。
さて、広島県には可部線という路線があります。広島にも行った事がないので資料情報のみで記しますが、かつては広島駅~三段峡駅,約60キロを結ぶ路線として運行されておりました。しかし平成15年にJR西日本が赤字を理由に、途中の可部駅から三段峡駅,約45キロを廃止する事を発表し、結局、この区間は廃止されてしまいました。
ところが・・・、平成29年3月に廃止区間の内、約2キロが復活したのです!!
何も知らない人から見れば、たった2キロと思われるかもしれません。
ですが廃止された区間が事実上復活したのは、鉄道史上初めての事でした。この事例の経緯を紐解いていくと、実は気仙沼線には充分に鉄路復活の可能性が担保されているのが分かるのです!!
可部線の復活した区間は廃止前から宅地化が進んでおり、廃止時も根強い反対がありました。JR西日本は「広島駅~可部駅までは電化区間で、可部駅~三段峡駅は非電化区間です。ですので地元が可部駅から約2キロ分を電化してくれるんなら、鉄道運行は継続しますよ」と示されたそうです。ですが地元(自治体)は電化費用を出せなかった為、残念ながら廃止となりました。廃止後も復活を求める運動は継続されましたが、JR西日本は相手にもしていなかった模様です。
しかし廃止から4年後の平成19年、事態は大きく変わりました。
「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」という新しい法律が施行された為です。
この法律は簡単に言えば、「地域交通の活性化の為に自治体が交通基本計画を策定し、それを国が承認した場合は国費として、鉄道の新線建設も含んで補助金を出しますよ」というものでした。
確かによくよく考えれば5年前に開業した仙台の地下鉄東西線も、建設費が国より補助金として降りていた事実がありました。この法律の補助金かどうかはちょっと分からないんですけれども、少なくとも新線建設に対する補助を国が行っている事実は確定的にあるんです!!
災害による復旧補助は、渋っていた過去があるのに不思議ですね。
可部線では廃止区間を新線建設として扱った為、国から補助が降りる結果になりました。その後、JR西日本、国、地元自治体等が会議を開催、鉄道新設の費用を国と自治体が持つ事でJRから鉄路復活の承諾を得る事に成功し、現在に至る事が出来たそうです。
因みに気仙沼線のBRTですが、実は大船渡線も含めて、国の補助を受けている事実があるんです。これ、あんまり知られていませんが、間違いないです。
国にはBRTの支援制度というものがあって、鉄道とは別に新規開業した気仙沼線と大船渡線もこの対象になっているのです!!当時、「国はJR東日本に対して、災害復旧を支援する法律はありません」とか言い出して、事実上鉄路復旧支援を拒否したふざけた現実がありました。ですがBRTは新規開業になりますから、国の補助対象になったんですよ!!
この事実に気付いた時、私の疑問はようやく解決しました。
なぜBRT=鉄道の代行バスという表現は、書類上正しくないのか?
鉄道としての気仙沼線と、BRTというバス路線の気仙沼線。
どうして別々の輸送機関として、個別に登録されているのか?
その答えは災害復旧の国庫補助金が降りなかった鉄道気仙沼線は休止、しかし新規開業路線扱いを受けたBRTは国庫補助金が降りた結果が、現在の状態だと言う事が出来るのです!!
・・・何ともアベコベで呆れちゃいますけれども、今は措いておきましょう。
さて、ここからが、かなり大事となってきます。
この現実を踏まえた上で可部線の事例を気仙沼線を当て嵌めると、面白い事が分かってくるからです。
仮に来年、鉄路復旧を改めてJRに求める事になったとしましょう。普通に考えれば「もう廃止になったから、無理でしょ」と発想すると思いますが、可部線の様に新規開業という扱いにすれば国庫補助金は入る訳です。
つまり、気仙沼市や南三陸町等が「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づいて、鉄道の気仙沼線を基軸にした交通基本計画を策定し、国より承認を受ければ、新規開業鉄道建設の補助金として国費が降りるという訳です。
実はこれ、JRの立場で考えると、かなり合理的になってるんです!!
先に私は今でも、気仙沼線は第11回等の過去のブログ記事で触れた様に、鉄道軌道整備法改正による災害復旧補助の対象になると思っています。
しかし残念ながら、巷では「一度BRTで本復旧を決めたのだから、国からの補助は出ない」とされています。もう気仙沼線の廃線は書類上は避けられませんので、この議論は措いておきますが・・・、
もし巷でいう事が正しいなら、本当に合理的なんです!!
何が合理的か。ここまでの纏めを兼ねて、JRの立場で推測説明してみましょう。
東日本大震災で被災したJR。
沿岸部の復旧について、利用者が多かった仙石線、政府が絡む常磐線は鉄路復旧が絶対であった為、自分達のお金で速やかに行う事にしました。
しかし、石巻線、気仙沼線、大船渡線、山田線の区間について被害が大きいにも関わらず、国からは補助金は出ないと言われました。元々需要が無い区間に、流石に大金を自腹するのは嫌でした。
石巻線は4つの中では一番被害が少なかったので、地元と協力してスムーズに復旧が出来ました。
でも残り3つは地元負担も期待出来そうにはありません。
さて、どうするか。そこで国がJRに言いました。
BRT新規開業支援制度で補助が出せるから、やってみない?
とりあえず何もしないよりはマシという事で、地元に提案。
山田線は拒否されましたが、気仙沼線と大船渡線は了承されました。
その後、山田線については三陸鉄道に下げ渡す事になりました。
多額の出費は痛手でしたが、お陰様でこの区間の55キロ分は一生、面倒を見る必要はなくなりました。
JRも当然、民間企業です。赤字を少なくする努力はしないといけません。
公共交通としての責任を軸に、どこまでコスト削減を図るかを常に考えています。
BRTの維持費は鉄路に比べて、確かに安いです。
でもだからといって輸送人員が低い=BRTがコスト削減かというと、そうではない。
震災前、山田線と大船渡線はすでに長距離輸送のお客を失いつつありました。
釜石市民は山田線回りで、盛岡に行きますか?
いや、釜石線か車を使うでしょう。
大船渡市民が大船渡線で、一ノ関まで行きますか?
・・・車でしょうね。
JRから見ると、短距離輸送相手では儲けになりません。
通学定期券の利潤だって少ない、通院の年輩者も回数券を使う。
しかも沿線の人口は減る傾向にある現実。
これを考えれば、山田線と大船渡線はこれを機に、一生BRTでもいいかと考えてしまいます。
その方々は公共交通機関を使わらざる得ない人達ですから、鉄路でなくとも利用はするんですから!!
でも気仙沼線は?
今度の連休に、楽天の試合を仙台まで見に行くんだ!!
何で行こうかな?
車だと混むし、バスだと遅れたら嫌だしな・・・
仕方ない、朝の気仙沼線の快速で行くか!!
今度のGWに、仙台の三越でスイス物産展をやるの!!
でもこの前の連休は、駐車場もいっぱいだったし・・・
GWですもの、絶対に混むわよね。
よし、じゃあ気仙沼線の快速で行こうかしらね!!
こんな感じ。
常に長距離利用者を相手にしてきたのが、気仙沼線なのです!!
例え車社会でも、電車の方が便がいいなら、自ずと選んでくれます。
気仙沼線は自ずと選ばれる素質があった路線なんです!!
気仙沼線から石巻線、東北本線を経て仙台へ。片道約130キロ、往復なら約260キロの収入が見込めてしまいます。ここが他の2つの路線と違う訳です。
・・・因みに気仙沼から北の人が仙台に行くなら、花巻や一ノ関から新幹線という発想になると思います。
県境を跨ぐと、仙台への親近感が大きく変わる旨、お伝えしたいと思います。
この事実を知っていたJRにとって、気仙沼線のBRT化は損を生むものでした。
鉄道だろうがBRTだろうがそんなに儲けが出ない路線なら、寧ろBRTの方が良いんですけど。
鉄道だからこそ利益があったのに、それを捨ててまで、絶対に利益が出ないBRTを永続していかなくちゃいけないわけ?
う~ん、でも流石に全額自腹の復旧では割に合わな過ぎるし。
どうしようか?
・・・よし、とりあえず、『BRTにして国費を貰って直しちゃえ。』んで目途がついてきたら『廃止届を出して、その後にまた新規開業という形で国費を貰って鉄路復旧が出来る』スタンスにしちゃおう!!
・・・この考え方に至れた時、私の疑問が雲散し、鉄路への希望の太陽が見えてきました。
鉄路前提としか考えられない、BRT専用道。そこを本当に鉄道が走り過ぎていく未来を、私は感じる事が出来たのです。
つまり簡単に纏めると・・・
『全額自腹で復旧はイヤ、だから補助金出るBRTで直しちゃえ』
⇓
『山田線は下げ渡したけど、大船渡線は鉄路にするメリットはないな。最低限出来る所だけ、専用道の工事をしよう。でも気仙沼線は鉄路の方がメリットあるから、仕方ないけど専用道は造っておこう。国費も出るし、やむをえまい』
⇓
『専用道の整備も終わりつつあるし、一度鉄路を廃止しよう。もし自治体が鉄路の望むなら、新規開業で国から補助金で対応(地域公共交通の活性化及び再生に関する法律)にしよう。でも大船渡線は一生BRTがいいから、鹿折唐桑~陸前矢作(専用道が無い区間)の整備費が掛かるから無理って言おう!!・・・つまり気仙沼線だけ、鉄路補助金ちょうだい!!』
というのが、私の考察です。
以前も書きましたが、専用道を鉄道軌道に戻す費用と時間の方が、9年間も手付かずの線路を復旧させるよりも遥かに楽なのは、周知の事実であると強く私は思っております。昨年の台風19号で多数の線区が土砂崩れ等で不通になったと思いますが、私は大船渡線の鹿折唐桑~陸前矢作も同じく、既に線路としては使えないレベルになっていると思います。大船渡線沿線の皆様には本当に申し訳ないんですけど、もう気仙沼~盛を鉄道で行ける日はこないと私は諦めています。
だからこそ、その対比で、BRT専用道とはいえ、きっちりとほとんど整備されている気仙沼線の将来性について期待しているのです。
可部線が復活するのに必要だったのは、費用の他には鉄道用地と踏切問題だけでした。
鉄道用地は最初の取り決めで、そのまま残されていました。鉄道新設に当たっては踏切新設は禁止でしたが、可部線では「運転回数が少なく、地形上やむを得ない」という特例の下で、3箇所も復活した事実があります。私もyoutubeで可部線の新規開業区間の踏切を確認し、あの交通量で認められるなら、「気仙沼線も絶対に大丈夫」と確信しました。
残りは移設区間の場所と費用のみですが・・・、これもJRの最初の発表から5年以上も経ており、状況も大きく変わりました。防潮堤の計画が幾度も変更される中で、当初の移設対象だった陸前小泉~蔵内間と清水浜~歌津間は既に立派な堤防が完成しました。素人目には、もう移設が必要なのは陸前階上~本吉間だけではと感じています。
復旧費も当初は現状復旧費300億+移設費400億で、計700億と言われましたが・・・。既にBRT専用道で路盤は完成してますし、移設も陸前階上~本吉間だけでかつ、国費が適応されるなら、めちゃくちゃ変わってくると思います。鉄路復旧の為に障害となる要素が、あの頃と比べて小さいのが現実なのです!!
但し、もちろん、大事なのは政治判断です。
誰も何も言わなければ、一生、BRTも有り得るに決まっています。
JR東日本がやっているのは鉄路の可能性を残す事であって、自治体がBRTでいいと言えば、それ以上にお金をかける理由がなくなってしまうからです。
だから今は、もう少し、このままでいい。
自治体側がいつか、必ず、鉄路を正式に要望出来る日が来るまで。
福島県の只見線の様に自治体側がきちんと、アプローチが出来る環境が醸成されるまで。
只見線の様に地元が鉄路を支援する位の気持ちで、JRと手を取り合って欲しい。
気仙沼線の鉄路復活が、復興の終了を合図する汽笛を鳴らす日まで。
【BRTで喜ぶ人なんて、いる訳ないじゃない。】
鉄道とバス、どっちが好まれるか。どっちがイメージが良いか。どっちが速くて快適なのか。
維持費の問題さえ無ければ、『鉄道の方が喜ばれるのは全国一律の考えではないか』と私は思っています。
最後に気仙沼市がJRより鉄路廃止を正式に通達された際に発表がされた、気仙沼市長のコメントについてを以下に記したいと思います。
『当市としては気仙沼線の鉄路廃止に当たり、JRより「遠い将来における気仙沼線の鉄路での復活の可能性を今後も残すこと」に変わりがないことを確認している。』
気仙沼市の鉄路廃止に関する市長コメント(リンク切れはご了承下さい)
そもそも鉄道廃止条件に「鉄路復活可能性を担保する事」が承認されている自体、イレギュラーであるという事を強調して、この章を終えたいと思います。<エピローグ>ここまでお読み下さった皆様、有難うございました。
気仙沼線が廃止となる現実に直面した時は、流石に目の前が真っ暗になってしまって、何日かはよく眠れない日々が続くほどに辛かった次第でした。
しかし自分なりにきっちりと調べた結果、気仙沼市のコメント通り、「鉄路復活の可能性の担保を証明出来た」事、自己満足ながらにまずは安堵しています。しかし、最後はやはり、政治判断なのも揺るぎ様の無い事実ともなっております。
然るべき機会が醸成されるきっかけとして、少しでもこのブログが役に立てば、管理者としてこれほど嬉しい事はありません。日本全国で、多くの地方路線が廃線危機を迎えています。
今回の章では少ししか触れませんでしたが、福島県の只見線の様にJR、国、自治体が協力すれば、廃線危機は乗り越えられる。広島県の可部線の様に復活運動の継続が、未来を拓く場合もある。私が諦めた大船渡線の鉄路復活だって、やり方によっては出来るはずなんです!!
JRと国と自治体がいがみ合っている内は、何も進展しない。だからこそ、気仙沼線の鉄路復活が只見線と同じ様に、「三者は鉄路に向けて納得し合えるんだ」という証明になって欲しい。
住民と利用者に歓喜を運ぶ最後の復興の総仕上げを告げる汽笛が響く、そんな日が来るのをいつまでも待ち続けたいと、心の底から思っています。
また更新したい事が出来たら、よろしくお願い致します。 有難うございました。
コロナウイルスに負けずに、頑張っていきましょう!! 筆者
PR